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社長のための人物見極めテクニック

人物見極めスキルを極める

人を見極めるということは非常に難しいことです。

 

まして自社の採用を前提に面接で人物を見極めるとなると

何をどうみれば良いのかわからない、という方も多いのではないでしょうか?

 

仮に見極めることが出来たとしても感覚的になったり経験則であることが多いと思います。

 

そこで昨今、良く提案される面接のやり方にコンピテンシー面接というものがあります。

コンピテンシー面接とは応募者の過去の経験に焦点を当てて事実を基に合否を判断する面接方法です。

 

この方法だと誰が面接を担当しても誤差が少なく根拠ある合否判定が出来るので私もオススメをしています。

 

採用の本当の目的とは何か

ただ経営者や採用担当者に是非考えていただきたいのは、

採用の本当の目的は何か?ということです。

 

当たり前のことですが採用して終わりではなく

採用した社員が入社後どれだけ活躍できるか、

採用の本当のゴールは採用した社員がどれだけ会社に貢献出来たかです。

 

だとすれば採用した人物の入社後の育成方法をどうするかについて

理解を深める必要があるのは当然です。

 

コンピテンンシー面接は比較的見えやすい人物特性に焦点を当てるやり方です。

しかし一人一人をしっかり見極めるためには見えにくい部分をいかに見ようとするかが大切です。

 

つまり人のマインドをいかに見極めるかが

「人事(ひとごと)」に関わる者の究極のスキルだと私は思います。

 

人のマインドを見極めるスキルはそう簡単に身に付くものではありません。

それなりの時間と経験が必要になります。

 

ただ、このスキルを身に付けることで採用のみならず

採った社員をどう育成するかという視点が見えてきます。

 

採用と育成は連動すべき課題ですので広い視野でこの重要課題を捉えることが出来るようになるのです。

 

ワンランク上の人物の見極め方とは

自分が人の何を見ているか言葉に出来る状態にすることです。

私は大きくわけて2つの要素を見ています。

 

2つの要素とは「スキル系」と「マインド系」です。

図をご覧ください。これは人物をどう見極めるかを図にしたものです。

 

 

まず「スキル系」とは初対面から比較的見えやすいものです。

例えば表情が硬い、柔らかい。人見知りしやすい、しにくい。挨拶が出来る、出来ない。

知識がある、ない。パソコンが出来る、出来ない。といった内容です。

 

これらは要素としては対人スキルと知識の2つに分けられます。

 

次にマインド系です。マインド系の要素は見極めの難易度がぐっと上がり、

特にピラミッドの下に行けば行くほど難しくなります。

 

物の見方、捉え方という項目について考えてみると

例えばポジティブかネガティブかという要素があります。

 

就職活動の見通しについて「大丈夫です」と話している学生の本音は

はたしてポジティブと見極めて良いのでしょうか?

 

「大丈夫」と話す根拠はあるのでしょうか?

そして「大丈夫」と口に出していることは本音なのでしょうか?

 

このように見えやすいスキル系と違って

マインド系は見極めに複数の要素を考慮する必要が出てきます。

 

ではどうすれば良いのか

人を見極める際に「何について」「どう」見えたのかを具体的にすることです。

まず大きく言って「スキル系」なのか「マインド系」なのかに分けて考えましょう。

 

あなたが見極めたことが「スキル系」の課題であれば、

その後教育して成長させることは比較的容易であると言えます。

 

ただし見極めたことが「マインド系」の課題であれば

ピラミッドの下に行けば行くほど教育して

成長、変化させる難易度は難しいということになります。

 

ただ、同じマインド系の課題であっても

見極めたカテゴリーによって成長、変化の難易度は違います。

 

あなたが見極めたのは、その人の性格でしょうか?感情でしょうか?

価値観でしょうか?それとも物の捉え方なのでしょうか?

 

仮に性格や感情であれば、それは変えようと試みたり

否定したりすることは絶対にしてはならないと私は考えています。

 

これまで1万人近い人の就職や採用をサポートしてきた経験から言えば

相手の性格や感情は否定せずしっかり受け止めることが求められます。

 

性格や表出する感情を変えられないことは

誰よりも本人が一番わかっているので、これを変えようとすること、

否定することはお互いに辛いことなのです。

 

性格は簡単には変えられない

ピラミッドの一番下にある人格や性格については

「尊重」することが何よりも大切です。

 

相手の人格や性格を変えようとするのではなく、

あなた自身が対応の仕方を変えれば良いのです。

 

とてもシンプルな例をお伝えすれば「せっかちな性格」の人には

まず結論から話すことを心がけましょう。

 

逆に「のんびり屋」の性格の人には結論を急がず待つことを心がましょう。

簡単なようですが意外と難しいので是非身近な人でお試しになってください。

 

では感情はどう扱えば良いのでしょう。

感情というのも人格や性格と同様本人ではコントロールが難しい部類に入ります。

 

スポーツ選手が「感情をコントロール」するなどというコメントを耳にしますが、

これはかなりのメンタルトレーニングを学ぶことで可能になります。

また本人の意思も相当強くなければコントロール出来ません。

 

また厄介なことに感情は無理に抑えつけようとすると

知らず知らずのうちに溜まってしまい専門用語で「心が抑圧された状態」になります。

 

そうなると過度にストレスが溜まった状態になり

予期せぬ時に爆発してしまうこともあるのです。

 

ですから相手の感情が噴出してきたときには

それをしっかり吐き出させることが必要になります。

 

本当の自己理解とは何か

そして採用担当者や人事担当者として

最も注意深く見極めたい「マインド系」は自己理解・自己認知、価値観・思考という項目です。

 

なぜならこれらの項目は十分変化成長させることが可能な項目だからなのです。

 

では自己理解とはどういうことでしょうか?

これは単に自己PRが出来るということではありません。

 

性格を一言で表すこととも少し違います。

自分が究極的な場面においてどのような考え方をする傾向があるか

どのような行動に出る傾向があるかなどを客観的に理解出来ているかということです。

 

自己認知も同じようなことですが

さらに客観的に自分の課題や立場についてずれなく捉えているかどうかということです。

 

相手がどのような自己理解や自己認知をしているのか

それが周囲の見方とズレがないかどうか

採用担当者や人事担当者はしっかりと見極めるスキルを身に付ける必要があります。

 

自己認知の重要性

価値観や思考についても同様です。

ただ人の価値観や思考を変化させることは容易ではありません。

 

難しければ無理に変えようとする必要はありません。

むしろ自己理解や自己認知に介入することで

価値観や思考が変化、成長する可能性があるのでその方がお勧めです。

 

思考とは考え方の癖ともいえることです。

 

例えばキャリア系の研修や社内キャリアカウンセリングなどで

本人の自己認知に変化が生まれたとします。

 

『自分はいつも感覚的に物事を捉えようとしていた。

だから逆に人に物を伝えようとするときも

わかりにくい話し方になってしまっていた。

 

これからはロジカルシンキングのスキルを学んで

もう少し論理的に物事を捉える習慣を身に付ける必要がありそうだ。』

 

上記は自己認知が変化したことで本人の思考も変化する兆候が見えた良い例です。

 

人のマインドを見極める力を養うことの効果

このように人物の見極めを「スキル系」「マインド系」に分けて捉え

どの項目についてどう支援するかを考えるのがワンランク上の人物の見極め方です。

 

お伝えしたように、このスキルは簡単には身に付きません。

大切なのは身に付けようとする意識です。

 

私は「人事(ひとごと)」を扱う採用担当者や人事担当者は

表の中の「マインド系」つまり見えない物をいかに見ようとする心がけが

とても大切であると思っています。

 

人の心は悪魔でもわからないという心理学の格言があります。

その言葉の通りそう簡単には人の心が読めるはずもありません。

 

ただ相手をわかろうとする心がけがお互いを理解することに

繋がり本当にその人に必要なサポートが出来るようになる根幹だと私は考えています。

 

そのスキルは目には見えませんが貴社のそして貴方の掛け替えのない財産になるに違いありません。