ハンドメイドでサステナブルな人事制度の活用意義
採用の売り手市場が続く中、企業は内定を出しても内定辞退に気を遣い、入社後も早期離職を心配し常に安心出来ない状況が続きます。その中でどのように人材育成を実施するのか大きな経営課題となっています。
入社後の育成について最近ではオンボーディングという呼ばれ方もします。オンボーディングとは会社の文化や仕事の進め方を丁寧に伝え、新入社員が組織の一員として早くから貢献できるよう支援する取り組みです。語源は「on-board(船や飛行機などに乗る)」で、新しく組織という船に乗る社員をサポートする意味合いがあります。
他には1on1ミーティングを積極的に活用する、配属部署以外の先輩や上長と悩みを相談出来るなど様々な取り組みが行われています。
これを設計、運用するためにはパッケージ型ではオリジナリティのある人事制度の策定が鍵になると考えています。これを「ハンドメイドでサステナブルな人事制度」と呼んでいます。
「ハンドメイドでサスティナブルな人事制度」とは、組織の文化や個々の従業員に寄り添いながら、長期的な視点で社員の成長と幸福、そして企業の持続的な発展を目指す人事のあり方です。既成のパッケージ制度を導入するのではなく、組織の現状に合わせて「手作り」で仕組みを構築していくことが特徴です。
【ハンドメイドでサスティナブルな人事制度の基本理念】
この人事制度は、「人・地球・利益」のいわゆるトリプル・ボトムラインの考え方とも合致しており、導入することで対外的にも良い印象を与えることが出来ます。
トリプルボトムラインとは、企業の活動を従来の「経済的側面」だけでなく、新たに「社会的側面」と「環境的側面」の3つの軸で評価する考え方です。ジョン・エルキントン氏が提唱し、「人(People)、地球(Planet)、利益(Profit)」の
3つのPで表されることもあります。企業活動の持続可能性を高めるためのフレームワークであり、CSR報告の国際基準であるGRIスタンダードにも取り入れられています。
・人(People): 従業員の幸福と成長に焦点を当て、公平性、多様性、ウェルビーイングを追求します。
・地球(Planet): 環境への配慮を人事制度に取り入れ、持続可能な社会への貢献を目指します(グリーンHRM)。
・利益(Profit): 長期的な視点で企業の成長と収益性を確保し、持続的な競争優位性を生み出します。
この制度は人材育成だけでなく採用においても効果を発揮します。会社の理念やミッション、ビジョンを軸にして、求める人物像の策定や合否判定の基準を言語化します。勘や経験則に頼る採用ではなく誰がやってもぶれない採用を目指すと共に本当に自社にマッチした人物を採用してミスマッチを減らすように採用を目指すことが出来ます。
オンボーディングの目的
端的に言えば、以下の3つの目的があります。
1.早期離職の防止: 新入社員が不安を感じやすい入社後の期間にきめ細かくサポートすることで、離職率の低下につなげます。
2.早期戦力化: 組織や業務に早く慣れることで、新入社員が早期にパフォーマンスを発揮できるようになります。
3.生産性の向上: 新入社員がスムーズに立ち上がることで、指導にあたる既存社員の負担も減り、組織全体の生産性が向上します。
企業へのエンゲージメント向上: 会社のビジョンや価値観への理解を深めることで、新入社員の会社への愛着や貢献意欲を高めます。
<従来の研修やOJTとの違い>
従来の研修: 短期間に集中的なスキルや知識の習得に焦点を当てることが多いです。
OJT(On the Job Training): 実際の業務を通じて仕事を教える教育手法です。
研修はその場では火が付きやすい長期的には冷めやすいという傾向があります。また外発的動機づけによって、ある意味強制的にさせられる傾向があるため、研修だけでなく、その後のフォローが重要となります。
一方でオンボーディングは 従来の研修やOJTを含み、新入社員が組織に定着して能力を発揮するまでの包括的かつ長期的なサポートを指すので、内発的動機づけによって社員自ら主体的に成長することが期待されます。そのためには以下のような3つのポイントがあります。
オンボーディングの成功への3つのポイント
1.オンボーディングに含まれる具体的な内容例
入社前: 内定者向けの懇親会やオンライン交流会。
入社直後: 会社理念やビジョンの共有、就業規則の説明。
配属後: メンター制度による先輩社員からの個別サポート、定期的な面談、部署内での交流イベント。
数か月後: 1対1の進捗確認、フィードバック、キャリアプランに関する相談。
2. 人材育成と能力開発
入社年次が浅い場合は特に、目の前の業務が本人にとってどのような意味や価値があるかを話し合うことが効果的です。
短期的な異動だけでなく、長期的な視点でキャリアを設計する支援を行います。ジョブローテーションや柔軟な働き方を取り入れることも有効です。また意図的な成長機会として業務を与えることも成長と能力開発を進める上では重要となります。
専門スキルが必要な業務の場合は、オンラインでの動画研修やスキルアップトレーニングが求められます。大切なことは受講して終わりではなく本人の学びの状態を把握することで躓きの要因を特定するだけでなく、離職因子の芽を早めに摘むことにも繋がります。
3. 評価とフィードバック方法
・従業員自身が自らの立ち位置がわかり、今後どのようにすれば、さらにステージを上げてゆけるかを見える化出来る制度が重要です。
・また評価を頭ごなしに伝えるだけでなく従業員の意見も聞きながら「安心安全」の場づくりを用意することが重要です。その上で、上長は従業員と同じ方向を向いて考える姿勢で面談を行い、従業員が前向きに業務に取り組めるよう送り出します。
<従業員50名以下の中小企業における実施例>
1.自社オリジナルのアセスメント作成
・人事評価制度構築や業務評価シートの作成をお手伝い
・従業員の働きぶりや業務到達点の現状を可視化
・パッケージ型ではなく自社の業務内容の棚卸しを基準に作成
2.従業員との1on1ミーティング準備
・上記1を使った従業員との面談に備えて伝える文言を個人別に協議
・想定問答集などを準備、検討
・面談の席の配置なども効果的、安心安全な空間づくりのアドバイス
3.経営者の右腕となり得る社員の育成(経営者が本来業務に専念)
・既存従業員の中から数名をピックアップ
・経営課題についてミーティングを月1回程度半年~1年ほど実施させる
・進行補助を清水が行う場合もある
・成果やプロセスも含めて昇格の判断とする
4.リーダー候補の外部採用
・右腕候補が社内に不在の場合、外部採用を検討
・会社にとってもハードルが高いイベントであることを経営者にも認知させる
・求人票作成、補足資料、説明会実施方法などアドバイス
5.自社の全体会議実施
・会社の過去、現在、未来を全従業員の前で経営者が講演する
・従業員には資料を配布し感想などを記載させる
・ケースによっては社史を従業員全員で作成するイベントも実施
・従業員の一体感の促進、経営者自身の気づきモチベーションアップ
どのような企業に役立つのか
◆育成に割く時間がない
・人事担当者や上長は、採用や日常業務と並行して育成業務を行うため時間的余裕がない
・日常業務に追われ、育成が後回しになる。
・テレワークなどで対面コミュニケーションが減少し、育成の機会が減る。
◆指導する側のスキルや意欲不足
・指導担当者自身が育成スキルや指導意識を持っていない、または「教え方が分からない」と感じている。
・管理職が部下の育成に本腰を入れない。
・育成能力が不足しているため、指導が形式的になる。
◆従業員の意欲・関心の低さ
・育成の必要性を感じていない従業員が一定数存在する。
・学んでも給与や評価が上がらない」といった不満から、成長意欲が低下する。
・自分の能力開発」と捉えられず、業務の一環としか考えられていない。
◆育成の目的が不明確
・人材育成が「何のために行うのか」という目的が不明確なまま進められている。
・「前年踏襲」で研修を行うなど、本来の目的を見失っている。
・育成計画が体系的に組まれておらず、継続的な取り組みになっていない。
◆育成体制の不備
・そもそも育成を行うための体制や仕組みが整備されていない。
・育成担当者が固定化され、担当者の負担が過大になっている。
・業務代替できる体制が構築されていないため、従業員が研修に参加しにくい。
◆効果測定が難しい
・実施した研修や育成施策が実際に業務にどう役立ったか、効果を測るのが難しい。
・育成にかけたコストや時間に見合った成果が出ているか不明なケースが多い。
・業務で高い成果を上げる能力と、人を育てる能力が混同されがち。
◆その他
・社員との面談や対話をしろと言われるが話題が無い
・評価結果は人材育成に活かされず昇給や賞与の判断のみに使われている
・従業員のスキルアップに具体的な施策が無い
・次世代リーダーを育成するための取り組みが見いだせない
・従業員のキャリアパスは特に考えていない
・年功序列の人事制度であることから若手の管理職が中々生まれない。
・職能給人事制度を、能力に応じて給与や評価を定める人事制度に変更したい
まとめ
企業を取り巻く環境がとてつもないスピードで変化してゆく中、中小企業と言えども質の高い人事施策が求められています。逆に言えば、小回りの利く中小企業だからこそ、スピート感を持って時代にマッチした人事施策を構築することが可能です。
ハンドメイドでサステナブルな人事制度は従業員50名以下の中小企業にこそマッチした人事施策だと言えるのです。



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